動き出したクルド連邦の夢
―― 政治的影響力を手にしたトルコのクルド人
The Kurdish Consolidation
2015年8月号 掲載論文
シリアのクルド人勢力(PYD)がイスラム国との軍事的攻防で大きな勝利を手にし、一方トルコ国内でもクルド系政党(HDP)が最近の選挙で大きな躍進を遂げた。だが、この展開から最大の恩恵を引き出せるのは、HDPを立ち上げ、PYDへの影響力をもつクルド労働者党(PKK)だろう。PKKがトルコ政府との停戦を維持できれば、HDPを通じてクルド人が民主的な方法で自治を獲得できる見込みはますます大きくなる。PKKは、分離独立は求めていない。むしろ、中東における3000万のクルド人を束ねる「汎クルド連邦」の実現を夢見ている。トルコとシリアの双方で自治的なクルド地域を確立するという夢が実現するかどうかは予断を許さないが、最近の進展が、すでにトルコと中東の政治地図を変化させているのは間違いないだろう。
- 二つの勝利
- 変化した欧米のPKKへのイメージ
- エルドアンという壁
- トルコ政治はなぜ変化したか
- 次にどうなるか
<二つの勝利>
トルコ、シリアの二つのクルド人集団が自治の獲得に向けて大きく前進している。トルコのクルド人は民主的選挙での躍進を通じて、シリアのクルド人は戦闘での勝利を通じて、進展を手にしている。
国際社会の支持、そしてシリアのコバニを包囲していたイスラム国に対する米軍の空爆作戦もあって、シリアのクルド人勢力は勢いを取り戻し、6月15日に戦略的要地であるテルアビヤドの攻略に成功した。その1週間前に実施されたトルコの選挙では、クルド系政党である国民民主主義党(HDP)が10%を上回る得票を得て、大きな躍進を遂げ、トルコ議会の勢力地図を大きく変化させている。
実際、クルド系政党がトルコ議会の一翼を担うようになったことは、この国の市民権にとって画期的な展開だろう。・・・
この論文はSubscribers’ Onlyです。
フォーリン・アフェアーズリポート定期購読会員の方のみご覧いただけます。
会員の方は上記からログインしてください。 まだ会員でない方および購読期間が切れて3ヶ月以上経った方はこちらから購読をお申込みください。会員の方で購読期間が切れている方はこちらからご更新をお願いいたします。
なお、Subscribers' Onlyの論文は、クレジットカード決済後にご覧いただけます。リアルタイムでパスワードが発行されますので、論文データベースを直ちに閲覧いただけます。また、同一のアカウントで同時に複数の端末で閲覧することはできません。別の端末からログインがあった場合は、先にログインしていた端末では自動的にログアウトされます。
(C) Copyright 2015 by the Council on Foreign Relations, Inc., and Foreign Affairs, Japan